〇〇殺し。

先日何かで「嵌め殺し」の窓という言葉を耳にし、改めてその語感に慄(おのの)いた。開閉しない固定の窓という意味だけど、ただそれだけの状態に対して「嵌(は)め」て「殺し」てしまうというのは、やっぱり少し言葉が突っ走りすぎてるんじゃないかと思う。別に大工さんがものすごいサイコな顔をしながら取り付けてるわけでもないだろうし、それじゃあ開閉する窓は生きているのかピチピチしているのかという話にもなる。でもその言葉を知って以来(割と最近です)、開かない窓に対して「あ…嵌め殺されてるんだ…」と見る目が変わってしまった。

それに比べると「半殺し」という言葉は実感を伴って伝わってくる。この場合の半殺しというのは勿論いきものを死んじゃいそうになるまで痛めつける方ではなくて、おはぎとかぼたもちに使うお米を粒感が残る程度につぶす、という意味の方です。なんだか村のお嫁さんが夫や姑に抱いたストレスを米にぶつけて発散している姿が目に浮かぶ。「このやろ、このやろ」なんてね。つぶれていく米の「ぐしょっ」とした質感がその陰惨さに拍車をかける…と誇張して書いていたら本当に怖くなってきた。出来上がりはとても美味しいんですけどね。今調べたら、おはぎそのものを半殺しと呼ぶ、Sっ気の多い地域もあるらしい。日本は広い。

殺さない殺し三銃士の最後の一角はやはり「女殺し」だろう。これはもちろん(中略)ではなくて、すごくもててしまう、僕とはまるで別の宇宙に住んでいらっしゃる男性の事である。「女泣かせ」という言葉もあるけど、不思議とこっちは本当に女性に迷惑をかけているような雰囲気もあって、「女殺し」の方が女性の方もその危険なアバンチュールを楽しんでいるような、裏腹な響きがある、気がする。詳しい事はわかりませんけど。いやはや、大人の世界は難しいなあー。