予告のない変化。

何才くらいからコーヒーが飲めるようになりましたか? 僕は子供の頃はコーヒーが苦手で、紅茶の方が好きだったんだけど、確か高校生になるあたりでコーヒーも嗜むようになった記憶がある。

もともとコーヒーが苦手だった理由は「なんかすっぱい」と感じたからだった。今思えば僕が子供の頃に町の喫茶店で出てくるコーヒーは、淹れてから保温しっぱなしの、ちんちんに熟成したものも多かったのだと思う。そしてコーヒーが苦手だというと、砂糖を入れてみたら?と勧められ、そうすると確かに甘くはなるんだけど、それが更に周辺を取り囲むすっぱさを際立たせることになり、あえなく撤退(ミルクをドバッと入れてコーヒー牛乳風にしちゃう。コーヒー牛乳が飲めない子供はあまりいない)を余儀なくされた。

それが飲めるようになったのは、なぜかある日「どうやら飲めそうな気がする」と思いたったからである。特別なきっかけがあったわけでもなく、うずくまっていたものが突然スタスタと歩き出したように、美味しく飲めてしまった。日々練習を重ねたものが、ある日ブレイクスルーが起こり突然できるようになる、というのはわかるけど、こんな練習も何もない(そして特に飲みたいとも思っていない)嗜好品が、急に楽しめるようになるとは不思議なものです。他にも初めて「炭酸が飲めた日」「ワサビが食べられた日」「ワインを美味しく感じた日」なんかがあったはずで、成長(というか変化)は案外こんなふうに予告なく、唐突にやってくるものなのかもしれませんね。

それで最近はまた紅茶を飲む機会が増えました。緑茶を飲むことも増えて、できれば縁側(ないけど)でひなたぼっこしながら飲みたいと思う。猫もいれば最高だと思う。そういえばもうすぐ春だ。大人の味覚を通過して、順調におじいさん味覚に向かっているような今日この頃です。