続いてウィスキーの話。
僕がウィスキーを好んで飲むようになったのは、やはり書物の影響が大きい。
村上春樹「もし僕らのことばがウィスキーであったなら 」
美味しんぼ 70巻「スコッチウィスキーの真価」
古谷三敏 「BARレモンハート」
が三大巨頭で、特に村上春樹のエッセイタイトル「もし僕らの言葉が〜」に関しては、初めて目にした時は
「ちょっと何言ってるかわからない」
というのが正直な感想だったんだけど、それから短くはない月日が流れ、今では
「まことにそうだ。もし僕らの言葉がウィスキーであったらばなあ…」
と深く共感してしまうようになった。僕も成長(?)したものです。
ウィスキーを気分で飲み分けるのは楽しい。優雅に夜を楽しみたい時はマッカラン、少し襟を正したい時にはグレンフィデック、繊細な気分にグレンリベット、日々の営みの疲れをほぐすのにラフロイグ、子守唄のようなボウモア、喝を入れられたい時にアードベッグ、ただただ甘えたいグレンドロナック…など枚挙にいとまがない。(この辺のウィスキーは大抵のバーにあるので、ご興味ある方はぜひ試してみてください)
飲み方は基本的にはストレートで飲みます。トワイスアップと言われる、常温の水と1:1で割る飲み方がもっとも味や香りがわかるということになってるんだけど、割っちゃうとなんか、逆に酔っ払ってしまう感じがあって。ストレートだと割としゃきんとする。
これまで感動的に美味しかったウィスキーというのは何個かある。だいぶ前だと思うんだけど、どこぞのバーで頂いた「花と動物シリーズ」の「オスロスク」はとても良かった。シングルトンという名前でもあるんだけど、その時飲んだオスロスクは焼きたてのトーストのような香りがして、初めて何の格好つけもなく、心からウィスキーを楽しんだような気がする。
逆に辛かったのは、東京ドーム近くの温泉施設?みたいなところで飲んだ「シーバスリーガル」。深夜だったので、お酒に詳しくない人が担当だったのか、ストレートで頼んだのに、普通のコップになみなみ注がれてしまった。多めのグラスワイン以上のえらい量である(ウィスキーのアルコール度数は約40度で、標準的なビールの8倍、ワインの3倍以上ある)。シーバスリーガルは上品なブレンデッドで大好きなんだけど、さあ今から寝ようかっていう時にそんなものなみなみ注がれてしまっては、もう戦いのようなものである。
と言いつつ「つらい!」と思ったのは最初に見た時だけで、結局うまいうまいと言いながら全部飲んじゃった記憶があるな。つまりどういうことかというと、困難に見える事柄でもいざ挑んでみると思ったほど大したことはない。「案ずるより産むが易し」という教訓を得た東京ドームの夜でした。